中学生部門 最優秀賞

「ただいま。」という声が聞きたくて

千葉県習志野市立第五中学校 1年 𠮷田 姫愛

「いってきます。」その言葉を最後に、一九七七年十一月十五日、今から約四十五年前、当時十三歳の横田めぐみさんが、中学校の下校途中、行方不明になった。アニメ「めぐみ」、劇団夜想会「めぐみへの誓い」の視聴が、私に拉致問題について深く考えるきっかけをくれた。私と同じ年のめぐみさんが拉致されていたことを知り、北朝鮮拉致問題の悲惨な実情を目の当たりにして、他人事ではいられなくなった。胸がしめつけられるくらい苦しかった。突然、家族や友人との幸せを奪われ、北朝鮮での生活を強いられた。めぐみさんの気持ちを考えると、言葉に出来ないほど、心が痛んだと同時に、私は、改めてたくさんの幸せにあふれた生活をしていると感じた。毎日、当たり前のように学校へ行ける幸せ、温かいご飯が食べられる幸せ、好きな洋服が着られる幸せ…。こんなにもたくさんの自由と幸せに満ちあふれている。自分が当たり前だと思っていた小さな幸せが、実は何より大きな幸せだったということを学んだ。だから、日々の何気ない生活を大切にし、過ごしていくこと、それが中学生の私にもできることなのかもしれない。

他に、拉致問題を風化させないために私たちができることは何だろうか。この問題を未来に引き継ぐために、DⅤDの視聴を学校でする。インターネット社会の今だからこそ、国内外の人にも情報を発信して、理解を深めてもらう。また、今回のように、私のような国の未来を担う世代が作文を書き、拉致問題の実態を知る、そしてそれを後世に伝えていく。私はそれらを心がけていこうと思う。

世界には、悲しいことに拉致問題以外にも様々な人権侵害がある。最近では、コロナウイルス感染者に対する偏見や差別も耳にしたことがある。身近なことで言えば、心ない言葉で人を傷つける人権侵害もある。どんな人権侵害も、決してあってはならないことだ。だから、私も、友達、クラスメイト、家族に対する言動に気をつけていきたいと強く思った。

私が視聴した「めぐみ」というDVDの中で、こんな印象深いセリフがあった。めぐみさんの母、早紀江さんが言った次の言葉だ。
「私たちは北朝鮮に住む一般市民の人を憎んだり恨んだりしている訳ではありません。ただ親として今も北朝鮮に囚われの身となっている娘を助け出したいだけなのです。」
とても悲しく辛い状況であっても、このような言葉が言える心の強さに深く感動した。

父、滋さんは悲しくも、めぐみさんとの再会を果たせずに、二年前にこの世を去ってしまった。今、めぐみさんの家族、日本国民が聞きたい言葉、それは、めぐみさんの「ただいま。」という明るい声だ。そんな明るい未来を心の底から待っている。